「チャンピオンを作りたいのはヤマヤマなんですけど、いかんせん夜はプロが少ないんですよ(笑)。ランカークラスはだいたい昼間に来ますから」と笑う。基本的にプロのトップ選手の多くは昼間のジムで練習をする。夜の部に来るのは仕事をしながらボクサーをしている者や、学生、社会人らの練習生が中心となる。プロ野球で例えると、昼の部が1軍だとしたら夜の部はファームと言ったところか。ならば田島は2軍ヘッドコーチのような存在かもしれない。夜の部でプロになり、上位選手になれば仕事をやめてボクシング一本の生活になる。そうなれば、練習時間も必然と夜から昼へとシフトする。そうやって田島が「1軍」に送り込んだ選手も多い。
「なんでですかね、まずほかに見る人間がいない(笑)。でもどうせならトレーナーに指導してもらった方が本人も嬉しいだろうし。忙しい日常の中でなんとか時間を作ってジムに来る彼らは、ボクシングが本当に好きなんですよね。危険が伴うスポーツだから家族や周囲に反対される子って多いでしょ。うちの親もそうだったから。まあそういうのもあって、そこまでボクシングがやりたいんだったら、せめてジムの中では好きなだけやらせてあげたいし、そういう子たちを応援してあげたい気持ちもありますよね」
夜の練習生には文字通り「光」はまだ当たらないかもしれないが、好きなことを思いきりやれる幸せはどんな忙しい日々の中でも何物にも代え難い喜びだろう。そしてボクシングに対する思いではプロの選手たちにも負けていない。「バイトして月謝を稼いで、遠くから通ってくる若い子もいますよ。社会人にしても仕事の後にロードワークをしたり、まず朝からずっと仕事してからジムに来るわけだから、1日の睡眠時間が3、4時間なんてザラ。まさしく『寝る間を惜しんで』ボクシングをやってるわけですよ。そういう情熱や思いは絶対大事にした方がいいし、もし彼らが責任ある立場の大人になった時に、若い連中に好きなことを思い切りやらせてあげられると思うんですよね」